妊活中、いろいろな要因でふっと転職を考えてしまうこともあると思います。
この記事では、キャリア支援の業界で15年以上、幅広い年齢、職種の方のキャリアと企業側の採用の考え方に向き合ってきた管理人の経験・視点から、妊活・不妊治療中の転職について注意をした方が良いこと、予め考えておいた方が良いことをまとめています。
妊活で転職を考えるきっかけ
妊活中の生活習慣の改善と、自分のキャリアを考えて転職を考える方を目にします。いずれも後悔をしない選択のために次の職場を探す方が多いです。
妊活中の生活習慣の改善のための転職
妊活中、その進捗次第では規則正しい生活、バランスのとれた栄養、適度な運動・・・と、健康的な生活のお手本のような日々を送る必要性がある場合、または必要に駆られてくることがあります。
自分の生活習慣を正しても妊活がうまくいかないと、感じるストレスをなくすために一つずつ整理したり工夫したり。その過程で職場がストレスや不規則な生活の要因になっていると感じると、転職してもっと働きやすい会社に行った方がいいのかも・・と思ってくることもあります。
不妊治療に通院するための転職
出張や深夜残業などが多く、不妊治療をするにも病院に通院ができない。会社の異動も叶わない・・・。けれど、妊娠はしたいので不妊治療に臨みたい。
そんな時に長い自分の人生、後悔をしないために継続して病院に通院できる業務形態の会社に移りたい!と考えて転職に踏み切る場合があります。
自分のキャリアのための転職
妊活中とはいえ、このままズルズル同じ職場にいたいとは思えない、やってみたい仕事がある、気になる会社がある、という場合もあります。
どの場合も非常に良く理解ができますし、タイミングに迷ったり、本当に転職できるのかな・・と不安に思っている方を見かけます。
転職自体は正直、どのようなときもやろうと思えばいつでもできると思います、と言うのが結論になります。
ただし、希望条件全てを満たす転職ことは状況や希望によって難しいこともありますし、タイミングを間違えたり、先々を考えずに転職を決めると痛い思いをすることもあります。
そのため、まずは転職のタイミングについて解説をします。
転職のタイミングの考え方
そもそも、妊活など関係なく、転職活動は次のようなタイミングで踏みだしている方を多く見かけます。
- 現職で次のような不満がある
- 給与
- 労働時間
- 業務内容
- 人間関係
- 勤務地
- やりたいことが明確にある
- 自分の市場価値(内定をもらえる会社)を知りたい
- 会社の業績不安・倒産など
転職活動自体は、やろうと思えばいつでもできるものです。そのため、転職しようか迷って踏み切れないことが続いているのであれば、一度転職活動をしてみたら良いと管理人は考えています。
なぜなら、転職を考えて踏み切れないことが続いていると、自分で現職の仕事への意味づけができない限り、1年後も、5年後も10年後も同じように迷い続けている可能性があるからです。
逆に一度転職活動をしてみると、次の会社を選んでも今の会社に居続けるにしても、自分の中で1つの納得感を得ることができ、以前よりスッキリ仕事に取り組むことができます。
ただ、どうしても転職活動をしたいのであれば止めはしないものの、苦労を覚悟しなければならない、または場合によってはお勧めできないなぁと思うこともあります。
転職活動で覚悟が必要なタイミングと注意点
状況にもよりますが、転職のタイミングとして問答無用でお勧めできる!とはならないタイミングは次の3つの場合です。
何をしたいかわからないけどとにかく転職活動をしてみたい
みんなが転職しているから自分もとりあえず転職活動をしてみよう・・、他にも合う仕事があるんじゃないか・・・
と思って何となく転職活動する方に多いです。
その方の経験してきたことや年齢などにもよりますが、「活動」としてスタートする前にキャリアの棚卸をしていくつか方向感を決めてから活動することをお勧めします。
そうでないと手当たり次第応募して時間と労力を費やして、成果のないままで終わってしまったり、先々をあまり考えなかったことによって選ぶ会社で失敗した、と感じることも多いケースもあるからです。
その場合、転職エージェントや第三者に相談をして、自分の経験が生かせるものややりたいことを整理してから活動してみると方向感を定めやすく進められます。
妊娠中に転職活動をしたい
妊活中に転職活動をしている場合も含め、転職活動中に妊娠が発覚することがあります。中には妊娠が分かっている中で転職活動をしたい、という方もいらっしゃいます。
妊娠時の転職活動をあまりお勧めできない理由としては、転職活動に苦戦してしまい、あっと言う間にお腹が大きくなり、出産を迎える時期に到達する可能性があるからです。
企業の採用活動は、入社直後からフルタイムで働き続けられる方を求めていることが多く、面接や選考中に妊娠していることを開示すると、入社後のパフォーマンスを懸念され、お見送りとなる可能性があるためです。企業は直接的に妊娠を理由に選考をお見送りにすることはできません。ただ、選考中であれば、お見送り理由はどのようにでも伝えることができるのも事実です。そのため転職活動中、妊娠を開示した選考でなぜかお見送りをもらい続けてしまう、と言うことは良くあります。
妊娠を隠して転職活動を行うのはどうなのか?
法律上は採用(入社)が決まった段階で妊娠を理由に解雇はできません。
(ただし、契約期間が決まっている雇用形態の場合、契約期限によっては当てはまらないので注意です)
つまり、選考中に妊娠を開示せず、入社後開示すれば、「妊娠しているから」と言う理由で企業は内定を取り消すことはできないと言うことです。そうすると、妊娠を隠して転職活動をすればいのでは?、と思う方もいるかもしれません。その場合は次の2点を理解した上で進めなければリスクを伴います。
- 面接での受け答えによっては、内定取り消しになる場合がある
- 入社先の労使協定の内容によっては、育休が取れない場合がある
それぞれ説明します。
❶面接での受け答えによっては、内定取り消しになる場合がある
面接の中では詳細な業務内容の説明があったり、○○という業務はできますか?など対応可否を確認するようなやりとりがあるのを多く見かけます。
このやりとりの中で「妊娠中だとその業務はは無理だな」と思いながらも面接では「問題ない」と答え、内定を獲得、妊娠を開示したとします。
もし、明らかに面接選考中に自分が妊娠していたことが分かるにも関わらず、妊娠中には難しいと分かる業務を、面接で「できる」と答えたことで虚偽扱いとなり、内定取り消しの検討をされてしまう場合があります。面接での業務遂行能力の確認に対する虚偽は、経歴詐称などと同様で十分お見送りとなる要素なのです。
ちなみに妊娠中に難しいと判断される業務内容としては、肉体労働などの重労働や劇薬・有毒ガスを扱うような仕事などが当てはまります。そのため、よほど出張・食事会・深夜残業などがある場合でなければデスクワークではあまり当てはまることは多くはありません。
あくまでも面接(選考)中に明らかに妊娠していることが分かっているのに嘘をついた、とされた場合なので、知らなかった、内定後に検査をしたら発覚した、など、どうしても内定を優先したい場合はそう答えることもできます。ただ、管理人の主観的な感覚としては一緒に働く方にあまりそのような嘘をつくのもどうなのかな・・とは思います。。少なくとも、管理人が相談を受けたら勧めはしません。
❷入社先の労使協定の内容によっては、育休が取れない場合がある
産休は働く女性が取得することができる大切な権利です。ただし、育休については、会社ごとに決められている労使協定によっては、入社1年未満の従業員を育休の対象外としていることもあります。その場合、産休自体は取得できるものの、育休を取得することができません。
産休は産前休暇が42日前~出産日まで、産後休暇は出産日の翌日から56日間となるので、約3ヶ月ほどを経て復帰となります。
そのため、転職活動をして念願の会社から内定を獲得できたとしても、育休取得ができないこともある、もしもの場合も頭に入れて活動する必要があります。
それでも転職活動する場合事前に心得ておきたいこと
ポイントとしては、次の2点です。
・入社後のことをあらかじめ考えておくこと
・転職活動への意識の持ち方
まず、入社後のことをあらかじめ考えておくことというのは、仕事への取り組みについてです。
妊娠中、新しい職場に入ることで懸念されることは次の3つです。
- つわりがあっても求められた仕事に臨めるか
- 健診・体調不良などで休みがちになる可能性はないか
- 入社後すぐ産休に入ることで自分が気まずく感じないか
特に休みを取る場合、有給休暇は入社半年後の付与が一般的となります。そのため入社直後に休みがちになると欠勤扱いとなり、給与が引かれてしまう可能性があります。
合わせて、つわりで業務が進まない、欠勤や早退が増えると他の社員と比較してパフォーマンスが低いとされた場合、評価が低くなる可能性、業務に差し支えがでる頻度の場合は業務内容・職種などの相談をされることもあります。
妊娠による不当な不利益(解雇、減給・・・など)を被らせることは会社はしてはいけないのですが、内容によって就業規則で定められていることから逸脱をしている、会社組織として業務や事業に差し支えるほどとなると個別に細かい相談の時間が設けられる可能性は頭にいれておきましょう。
そのためどうしても活動するのであれば、これらの入社後の休暇のとり方や人事的な評価の面も理解した上で、「まず内定を取りに行く」ことを優先すれば雇用の確保ができる可能性はあります。もし入社後すぐの産休に気まずさを感じる場合、入社直後から高い成果を残すつもりで活動すれば気まずさも少しは紛れるかもしれません。
以上を踏まえて、まずは内定を確保することを優先して転職活動を始めたとしても、企業側の採用活動の意図も踏まえて次の2点を意識して進めることをお勧めします。
- 内定を取るための転職活動にしていないか
- 入社後すぐ活躍するつもりで準備をしているか
転職活動の目的が内定を取るだけであれば、採用まで妊娠の事実を隠し通せば良い話です。しかし、入社したら面接で話した方と一緒に働く場合もあります。面接官の方は、面接で費やした時間、労力に加えて、採用したあなたに対して評価したこと、期待している働きがあります。
その期待を入社直後に揺るがすことになることになりますので、信頼を得るためにも、「内定さえとればいい」、という考え方ではなく、「入社させてもらったら、産休に入る前に早く戻ってきてほしい、と思ってもらえる位のパフォーマンスを出そう」という気持ちで取り組むことをお勧めします。
そのためには、面接時に単純な業務説明だけではなく、求められる成果、ゆくゆく実現したいこと、解消したい課題など、自分に期待されていること、発揮すべき能力をすりあわせることで把握し、入社までに準備をしていくことで入社後のキャッチアップや活躍がしやすい土台を築けるかもしれません。
在職年数が1年未満が続いている
転職活動をされている方の中には1社の勤続年数が1年を満たないことが2,3回続いている方もいらっしゃいます。
もちろん、転職理由や経験内容、職種にもよるのですが、正社員雇用であまりにも短期間の転職が続いている場合、企業からの見られ方としてはあまり良くないことが多いです。
特に理由が、人間関係や業務内容の相違などの場合、こらえ性がない、組織になじむことが難しい、計画性がない、責任感がない、仕事の確認やすりあわせができない、等の評価を受けてしまうことがあるのです。
企業にとっては入社後すぐに辞めてしまうことが一番の採用のリスクとなるので、これまでの職務経歴から短期間の離職が続いていると、どうしてもその懸念がつきまといます。
この場合、なかなか書類選考が通過しない、面接で転職理由を話したときに納得をしてもらえない等の理由で選考苦戦が見込まれます。
妊娠中かつ、在職年数が少ない場合は特に見られるポイントとなる可能性があります。転職回数で問答無用でお見送りとならないよう、事前に職務経歴書に理由を簡単に記載しておくことをお勧めします。書くときには、会社の環境や制度への不満などは御法度です。
お勧めは次の2つの記載です。
❶次に培いたいキャリアや取り組みたい業務
❷なぜそのために転職と言う選択肢になったのか・現職に入る前にそれは分からなかったのか
経験もクリアしていて入社後の業務とマッチする場合、納得感を得やすく体裁を整えることができます。
妊活や不妊治療中の転職活動の注意点
妊活・不妊治療中の転職活動で共通しているのが、転職活動中に「妊娠」した時、どうするのか、と言う点です。
おめでたいことではあるものの、妊娠をしたら転職活動を辞めるのか?妊娠関係なく、転職をしたいと思っているのか?と言うことでも判断が分かれるところです。
もしかしたら、妊娠をしたら転職活動を辞めるつもりだったけれど、とても良い会社に出会えた場合、どうにか入社をしたくなった、と言うケースもあるかもしれません。
妊娠時の転職の判断は自分自身の考えや覚悟と、企業側の受け入れ環境や制度のすり合わせが大切になりますので、頭に入れておきましょう。
不妊治療中の転職活動注意点
不妊治療中の転職活動は次の点が事前に確認したいポイントです。
- 投薬などで体調を崩していないか
- 急な休みなどが入らないか
- 通勤しながら通院できそうか
不妊治療中の転職活動は、入社後、企業側が期待している勤務時間・勤務形態で求められている仕事をすることができるのか、と言うことさえクリアになれば活動を進めても良いと思います。
ただし、先ほどあげた❶~❸が難しければ、場合によっては
・まずは入社後業務に慣れ、職場の人間関係を築くことを優先し、不妊治療のタイミングを検討する
・転職活動を治療が落ち着いたタイミングにずらす
ということを検討するのも一手だと思います。
そうでないと、有給休暇は入社半年後の付与が一般的であるため、入社直後に休みがちになると欠勤扱いとなり、給与が引かれてしまう可能性があること、頻度にもよりますが、試用期間中の欠勤、早退等で勤務態度から雇用継続への懸念がでてしまったり、著しく評価が低くなってしまうこともあります。
投薬などで体調を崩していないか
服薬や注射などでホルモンコントロールを行っている場合、人によっては体調を崩してしまったりする方もいます。もしも会社を休む、半休や早退を繰り返すほどの体調の場合、あまり転職活動をお勧めできません。
有給休暇の有無の問題はもちろん、欠勤・早退は勤務態度にマイナス評価となりかねません。あまりに周囲・業務への影響があると、入社後役職・職級・職種の変更など調整の相談が入ったり、休職の打診を受けることもあるかもしれません。不妊治療の開示をしていない場合、試用期間中に雇用継続が難しいと言う判断となる場合もあります。
そうなるとせっかく希望した仕事や会社に入れたとしても、仕事を覚えたり人間関係を築く余裕を持てず、うまく会社になじめない、業務を進められないことでストレスの要因となってしまうこともあります。
そのため、これまでの治療の履歴やご自分の体調の状況と照らし合わせて業務対応ができそうか、またはそのような状況に陥っても乗り越えられるタフさを持ち合わせているかなどで転職活動を検討すると良いかと思います。
急な休みなどが入らないか
不妊治療も採卵や体外受精・胚移植のタイミングでは休みを取って治療を受けることもあります。休みを取る治療のタイミングも病院によりけりで、採卵や胚移植周期に入ったときに事前に分かるケースもあれば、何日か前に急遽呼び出しを受けることもあります。
休みを伴うような治療は3、4週間に1度とはいえ、入社後、有給休暇が付与される前に休むことになります。有給付与前の休みは欠勤扱いになり、給与が減る可能性も頭に入れる必要がありますし、場合によっては入社直後、上司に事情を説明して急な休みを認めてもらう必要があります。
その場合、研修カリキュラムがしっかり決まっているような場合、研修期間中に休む必要が出てきてしまったり、担当業務がすでに発生している場合は上司や同僚に担当分を代行してもらう必要もあります。
特に研修期間がある場合は、その周期分は採卵・胚移植をお休みすることを検討する、病院の調整がきくのであれば、会社が休みの日に治療を調整をしてもらうなど業務の差し支えがないように進められるとベストです。
もしもこれらの調整が難しい、頻繁に休むことが必要になる場合、入社直後から勤怠の面で少し目立った存在となることがあります。それも覚悟の上で入社することになるかもしれません。
上司や同僚に相談をしやすい雰囲気であれば予め状況を説明し、理解をしてもらえると進めやすくなります。ただ、あまりに休みがちだと「不妊治療をするための転職」と捉えられることもあるので、出勤日へのパフォーマンスと、入社直後の業務キャッチアップを人一倍努力をしておくと周りからの支えを受けやすく、信頼も獲得しやすくなります。
通勤しながら通院できそうか
転職をする場合、次の職場を起点として不妊治療に通うこととなります。出勤前または退勤後に通院をすることになるので、出社時間、業務終了時間と病院の距離から通院できそうかを検討しましょう。
在宅勤務など、リモートワークがメインの場合は自宅からの通院がメインになるかもしれません。出社がメインの場合は会社が拠点となります。フレックスタイムの導入有無でも仕事をする拠点の選び方や通院スケジュールも変わってくるかもしれません。
裏を返せば、仕事選びの際、どんなにやりたい仕事や行きたい仕事が合ったとしても、不妊治療に励む以上、通院できるのか?と言う問題で応募先が左右されてしまうことがあると言うことです。
一度転職してその後また希望のところに転職をすればいいや、と考えていたとしても、新しい職場で妊娠・出産を迎えた場合、育児と仕事の両立に追われてすぐに次の職場に移るのが難しい場合もあります。
そのため、まずは不妊治療ができる勤務場所、勤務時間であること、次いで自分のやりたいことや行きたい業務で探していくことになります。できれば、その後の出産も見据えて時短勤務の有無や子育て社員や制度の有無などもチェックできると長い目で安心することができます。
まとめ
転職活動は自分の人生にも、まだ見ぬ子どもとの生活においてもとても重要な選択肢となります。今回は妊活・不妊治療中に転職活動を行う上での注意点や事前に覚悟をしておくことなどをまとめました。
厳しい面を中心にまとめた記事でしたが、妊娠していることを理解した上で受け入れる判断をする企業もありますし、不妊治療中においても、入社後しっかりケアをしてくれる企業も勿論あります。
妊活や不妊治療をするためにどうしても転職をしたい方も大勢いらっしゃると思います。そのため、どうしても転職活動をしたい理由をお持ちであれば、やっぱり難しいんだ、ダメなんだ、と諦めるのではなく、一度試してみることは本当にありだと思います。
ただ、大多数の企業は妊娠状況を把握するとお見送りという判断をしていることも事実ではあるので、楽観的に取り組むのではなく、しっかり準備と覚悟をして転職活動を行いましょう。